長野県の北西端、小谷村から新潟県糸魚川市へと抜ける国道148号沿いに位置する道の駅「小谷」。
9都県に及ぶ関東「道の駅」連絡会に登録されている約180カ所の道の駅のなかで都心から最も離れているにも関わらず、同連絡会が開催するアンケート調査「関東好きな道の駅ベスト30」に、ほぼ毎年ランクインする人気の道の駅だ。
訪れる人のお目当てのひとつが、食事処「鬼の厨(おにのくりや)」で提供する本格的な羽釜で炊くご飯。村の生産者グループから買い取ったコシヒカリを、ガスではなく、かまどの火で炊き上げる。
煤けた古材を使った落ち着く空間に木の燃える香りが漂い、料理を待つ時間も心地よい。
一番人気は「日替わりかまど飯定食」。1杯目のご飯は、炊き込みご飯または白米から選べるだけでなく、おかわりも自由。
みずみずしくふっくらしたご飯だけでも満足だが、毎日替わるおかずも、村の放牧豚である「小谷野豚」や、きのこ、山菜など小谷村ならではの素材が楽しめる。
酒や醤油などの調味料も、村産食材から造られたものを使用。漬物も自由におかわりでき、味噌汁は豚汁または季節の味噌汁から選べるのもうれしい。
「小谷野豚」は、広大な村の野山に約4~5カ月放牧し、健康的に育った村のブランド肉。締まった赤身は旨みが強く、脂身はさっぱりとした甘みがある。
メニューはトンカツの他、厚切りのしょうが焼きや焼売など、バリエーション豊かに揃う。
新メニュー「塩の道御膳」は数量限定。「小谷野豚」の角煮や、小谷村の工房の生ハム、信州サーモンやシナノユキマス、信州大王イワナの刺し身、季節の天ぷら、蕎麦など、長野県と小谷村素材のいいとこどりセットだ。
さらに、「鬼の厨」で食事をすると、道の駅に併設された日帰り天然温泉「深山の湯」の入浴料が半額になるサービスも。
温度の違うふたつの源泉から引湯し、加温や加水をせずに「熱湯」「ぬる湯」の2種類が楽しめる。露天風呂やサウナもあるので、ゆっくりとくつろぎたい。
加えて特筆したいのが、オリジナル商品の充実ぶりだ。
小谷村は全国屈指の豪雪地帯であり、急峻な地形で旬の農産物がほとんど採れないことから、ヤマブドウやサルナシ、蕎麦、清らかな湧き水など、村の原材料を生かした、道の駅ならではのオリジナル商品を続々と開発している。
栂池高原の雪どけ水で仕込んだ「雪どけサイダー」は、すっきりとした甘みで不動の一番人気だ。
冬の売れ筋は、村で採れるハチミツの副産物・ミツロウを使って化粧品メーカーと開発した「みつろう保湿クリーム」。
自然由来の素材で保湿力が高く、柔らかくて伸びが良いうえに、アンチエイジング効果で知られる抗酸化物質も含むことから女性に大人気だそう。
また、冬に高い注目を集めるのが、村の特産品「雪中キャベツ(雪中甘藍)」。根を張ったままのキャベツを雪の下で2週間以上育てることで、キャベツ自身が凍らないようにと糖度が高くなるのだとか。
実が大きく締まっているのに柔らかいのも特徴。冬しか食べられないため、毎日飛ぶように売れるという。手に入れるなら入荷時間のお昼頃が狙い目だ。
木の温もりがあふれるセレクトショップのような雰囲気の売店は、開業20周年を経た2020年にリニューアル。村内で解体された古民家の梁や柱といった古材をインテリアとして再利用している。
内装には、地元で活躍する陶芸家が焼いたタイル、小谷村の土を使って地元職人が左官した壁や漆喰を使って作られたレリーフの「鏝絵」、伊勢神宮の式年遷宮も手がける茅葺き屋根職人の「茅葺アート」なども。
地域の素材や技術を生かした村の文化を、そこかしこに感じることができる。
全国各地が観光化され、その土地ならではの特産物を見つける機会が減っているなか、独自の特色が詰まった道の駅「小谷」。ついでではなく、わざわざ立ち寄りたい魅力があふれている。
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