
日本最古の歴史書のひとつ『日本書紀』にも登場するとされ、開湯1,300年の歴史を誇る松本市の名湯「浅間温泉」。
江戸時代には初代松本藩主・石川数正が保養のために湯御殿を造営し、城主や臣下の武士たちの別邸が並んだといわれる。また、善光寺参りの湯治客も訪れ、湯宿が軒を連ねる「松本の奥座敷」としてにぎわうようになった。

明治時代以降は、竹久夢二や与謝野晶子、若山牧水、田山花袋ら多くの文人墨客がこの地で優れた作品を制作。正岡子規や伊東左千夫などが集まったアララギ派発祥の地としても知られる。

今もレトロな風情を残す温泉街には、7本の源泉がある。アルカリ性単純温泉で肌の不要な角質を取る「美人の湯」としても有名。無色透明の湯で、匂いやクセもほとんどなく、さっぱりとした湯上がりが特徴だ。
松本の中心部から車で10分ほどというアクセスの良さもあって、多くの人に親しまれている。

日帰り入浴施設は3つ。そのひとつが、かつての「御殿湯」から受け継がれてきた「湯々庵 枇杷の湯」だ。1594年に松本藩の殿様専用の別荘地として造営された温泉で、自然が豊かで純和風の落ち着いた雰囲気が漂う。

明治維新後に旅館になり、1997年に、格調高い風情を生かして日帰り入浴施設にリニューアル。情緒あふれる館内では、そこかしこに往時の面影を感じることができる。
玄関ホールの大窓からは、松本藩2代目藩主・石川康長が広い日本庭園に植えた樹齢400年になる「お殿様のお手植えの松」を眺めることも。

浴場は、露天風呂付き大浴場(内湯)と露天岩風呂「お殿様の野天風呂」のふたつ。大浴場は1階と2階で男女別に分かれており、週に1回、男湯と女湯が入れ替わるので、個性豊かなふたつの湯を週替りで楽しめる。

また、大浴場は泡風呂とヒノキの露天風呂付きで、加水はしておらず加温のみの100%源泉かけ流し。つるつるとした気持ちのよい肌触りで、慢性リウマチ性疾患や神経痛、慢性胃腸病などのほか、皮膚の炎症を鎮める効果も期待できるという。サウナと水風呂も併設している。

野趣豊かな野天岩風呂「お殿様の野天風呂」に入浴するには別棟へ。一度建物を出て、竹林に沿った小道を数mほど上がった先の隠れ家のような建物へと向かう。

かつて御殿湯があった場所に建てられた趣のある佇まいで、入浴をしながら自然を間近に感じられる岩風呂だ。

木々に囲まれ、夏は緑、秋は紅葉、冬は雪景色を眺めながら、お殿様気分を味わいたい。
※「お殿様の野天風呂」は今後全面改修し、貸切風呂に変更予定(改修開始は未定)
湯上がり後の休憩は母屋で。縁側のある和室と木のテーブルが並ぶ湯上がり処は、広々した空間でゆったりとくつろげる。
太くて立派な梁は、400年以上前の造営当時のまま。かつての資料や家宝なども展示されている。

館内には、庭に面したカフェ「MARUKURU(マルクル)」も。カウンター席と畳席があり、コーヒーや紅茶、りんごジュースやビールなどの飲み物と、そば粉で作ったそばおやきや薄皮おやき、ジェラートなどの軽食を楽しめる。入浴をせず、カフェのみの利用も可能だ。

また、館内奥には完全予約制のお食事処「日本料理 草創庵」もあり、国産そば粉で打つ手打ちそばや天丼、各種御膳といった本格日本料理を提供している。

「湯々庵 枇杷の湯」近くには飲泉所も。温泉水を飲むことができ、独特の風味を味わえる。飲むと整腸作用があるのだそう。

静寂のなか、優雅で贅沢なひとときを過ごせる日帰り天然温泉。温泉街の散策とともにゆったりとした湯浴みを楽しみたい。
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