奈良時代の高僧・行基が724年に開基したとされる天台宗の名刹「布引山釈尊寺」。
岩を削って創建された朱塗りの観音堂内の宮殿は、数々の戦火を免れ、細部に鎌倉時代建築の特色を示すことから、国の重要文化財に指定されている。ここに安置されているのが、「牛にひかれて善光寺参り」の幻牛伝説で知られる「布引観音」だ。
寺伝によると、昔、信心の薄い強欲な老婆が千曲川で布をさらしていたところ、どこからか一頭の牛が現れ、角に布を引っかけて走り去ったという。老婆は必死にその後を追いかけ、ついに善光寺までたどり着いた。
しかし、牛の姿を見失い、日も暮れたことから本堂で一夜を明かすことに。すると、夢枕に善光寺如来が立ち、不信心を諭されたといわれる。目覚めた老婆は今までの行いを悔い、信心深くなって、たびたび善光寺を訪れるように。そして、ついに極楽往生を遂げたといわれている。
一説によると、牛が引っかけていった布が「布引観音」の肩にかかっていたとの言い伝えも。こうした逸話から、「牛に引かれて善光寺参り」は、思ってもいなかったことや他人の誘いによって、良いほうに導かれることのたとえにもなっている。
江戸時代には岩壁に引っかかるように建つ観音堂の独特の景観から、「断崖の観音様」として絵図で紹介されるなど、北国街道を往来する人が足を延ばしてにぎわったという。
駐車場から観音堂までは片道20分ほど。参道は布引渓谷沿いに位置し、石段などが整備されているものの、坂道かつ湧水によりぬかるんでいる場所もあるため、参拝には要注意を。
道中には滝や奇岩、地蔵などの見どころがあり、釈尊寺の本堂や長野県宝の白山社などいくつもの伽藍を経て、観音堂へと至る。堂内からは千曲川や浅間山も一望できる。
なお、観音堂が建つ崖は、16mもの長さになる白っぽい石質の「布岩」で、白い布のように見えることから「布引山」という山号や、「牛にひかれて善光寺参り」の伝説の発祥になったとか。
小諸駅からは約5km。駅では電動アシスト付き自転車のレンタルもできるので、のんびりサイクリングもおすすめだ。
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