
国立公園に指定されている志賀高原の南東端、長野県と群馬県の県境に位置する標高2,307mの横手山。リフトで上がれる日本一高い山で、眺望がよく、バスや徒歩などでも気軽にアクセスできるため、夏のハイヤーや冬のスキーヤーはもちろん、季節を問わず全国から観光客が訪れている。

その山頂エリアにあるのが、“雲の上のパン屋さん”の愛称で知られる「横手山頂ヒュッテ」。木造の趣のある建物で毎日手作りされる焼きたてパンは、ここでしか味わえない絶品と評判で、多くのファンを虜にしている。通年営業で、遠方から足繁く通うリピーターも少なくない。


パン売り場は、ヒュッテに入ってすぐのレストランの一角。香ばしい香りが広がる空間に、焼きあがったばかりのパンがずらりと並ぶ。
一面に赤い絨毯が敷かれた異国情緒あふれる雰囲気も相まって、パンを眺めるだけでも気分が高まること間違いなし。

パンのラインアップは、ソフトフランスパンや山型パン(ミニ食パン)などのシンプルな食事パンから、カレーパンやベーコンオニオンパンなどの調理パン、アンパンやカスタードパンといった菓子パンまで15種類ほど。

志賀高原の湧き水と厳選した国産小麦粉を使ったパンは、防腐剤は一切不使用。標高2,300m超の高地にも対応できるドイツ製の窯で焼かれており、午後には売り切れてしまうことも少なくない。

特に人気は、りんごを使ったパンや夏季限定の「野沢菜パン」など、信州の食材を使ったもの。
クルミパンやレーズンパンもすぐに完売してしまうそうで、種類豊富なパンを楽しむなら開店直後が狙い目だ。

持ち帰りもできるが、焼きたてをその場で味わうのがおすすめ。ふんわりもっちりとしたパンは滋味深く、北アルプスや富士山、日本海まで見渡せるテラス席や屋外のテーブル席で味わえば、おいしさも格別だ。

「横手山頂ヒュッテ」でパンを作り始めたのは、昭和40年代。2代目オーナーの高相重信さんの妻で神戸出身の妙子さんが「かつて故郷で食べたパンをここでも食べてみたい、自分たちが食べたいパンを作ろう」と、うどんの粉を使って独学で始めた。
高地でのパン作りは気圧や気温の関係で温度調整や生地の発酵が難しく、ヒュッテの浴室で生地を発酵させるなど苦労も多かったという。試行錯誤の末、10年ほどかけて作り上げたそうだ。

現在は、妙子さんと、息子で3代目の育永さん、妻の則子さんの3人で作っている。
乾燥が激しい環境のため、常に霧吹きで生地に水をかけながら作るなど、高地ならではの工夫で独特の味わいを引き出している。


レストランでは、パンの他にうどんやカレーライスなども提供しているが、名物は「きのこスープ」と、ロシア料理の定番メニュー「ボルシチスープ」。

「きのこスープ」はやさしい味わいのクリームシチューを塩味の効いたパン生地で包んで焼いた、きのこのような見た目のかわいいスープ。ぜひ膨らんだパンをスプーンで突いて味わおう。
オリジナルの器もかわいく、熱々のシチューは、高地で冷えた体を温めてくれる。

「ボルシチスープ」は、丸ごとのジャガイモなど具だくさんの野菜をトマトベースで煮込んだ、さっぱりとした味わいながらボリューム満点のスープ。50年ほど前に重信さんがロシア人から教わったという本場のレシピで作られている。どちらのスープも山型パンとセットにできる。

長年、登山客やスキー客を迎え入れてきた情緒あふれる佇まいのなかで、心ゆくまで往時から続くメニューを堪能したい。

なお、横手山頂まではマイカーの利用はできないが、いくつかの方法でアクセスできる。リフトを使った行き方は2種類。

一つは、「横手山ドライブイン」の手前にある「のぞき」と呼ばれる展望スポットのバス停付近に駐車し、山の斜面に架かる動く歩道「スカイレーター」からペアリフト「スカイペア」を乗り継ぐ。もう一つは、群馬県境の渋峠に駐車し、「ロマンスリフト」で山頂に向かう方法だ。
スカイレーターは1本で、時間帯や乗車待ちの人数によって上りと下りが交互に切り替わる。混雑時は行列になることも
乗り場はいずれも志賀高原と群馬県草津方面をつなぐ志賀草津道路(国道292号線)沿いにある。写真左下が「のぞき」の駐車場。こちらは駐車可能台数が少ないので要注意
渋峠は長野・群馬県境をまたぐ渋峠ホテルも有名。この向かいに駐車場がある
また、渋峠からは「横手山頂ヒュッテ」の送迎バスの利用も可能。1人1,000円(税込)で渋峠からヒュッテまでの私道を往復送迎してもらえ、片道約5分と最短ルートだ。
乗車料金は施設や私道整備の協力金となる。ヒュッテ到着後にレストランの券売機で支払おう。
バス利用は渋峠に停車中のバスドライバーに合図をするか、横手山頂ヒュッテに電話をすればOK(渋峠発最終13時、ヒュッテ発最終14時)
さらに、徒歩でのアクセスの場合は、渋峠駐車場からスキー場のゲレンデを30分ほど歩くルートと、「のぞき」付近の駐車場から50分ほど稜線を歩くルートがあり、どちらも手軽に気持ちの良いトレッキングを楽しめる。


ヒュッテ周辺は平らで広く、三角点や横手山神社もあるので散策もおすすめ。昼夜の寒暖差が大きくなる春や秋の早朝などには雲海に出合えることも。
サンセットポイントとしても有名なので、時間帯によって表情を変える四季折々の風景にも注目したい。
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