
乗鞍岳の麓、標高1,500mの乗鞍高原に位置する「乗鞍高原温泉」。山腹の標高約2,000m地点にある中部山岳国立公園の特別地域内、湯川源流で自然湧出する温泉を引湯している源泉かけ流しの温泉だ。

乳白色の単純硫黄泉は、特有の硫黄の香りが立ち、強い酸性で殺菌力が高いことから、ニキビや水虫、湿疹といった慢性皮膚病、アトピーなどに効果があるとされる。また、神経痛や筋肉痛、冷え性などの療養泉一般の適応症のほか、切り傷ややけどなどにも効果を発揮。慢性婦人病、糖尿病、高血圧症、動脈硬化症などの改善も期待できる。
加えて、源泉一帯には戦国時代の武将・武田信玄によって開拓された「大樋銀山」があり、信玄が温泉で疲れを癒したともいわれるほど効能が豊かだ。

この源泉からの引湯施設は高原内に50軒ほどあり、日帰り入浴可能な施設も。そのひとつが、乗鞍高原の中心部、「のりくら観光案内所」の斜め向かいにある公共入浴施設「乗鞍高原 湯けむり館」だ。
温泉街で唯一、通年営業をしている日帰り入浴専門施設で、2013年に新施設としてリニューアル。白濁の湯は以前のままに、内湯からも外湯からも乗鞍岳が見渡せる、開放感いっぱいの明るい建物に生まれ変わった。

施設周辺にいるだけでほのかに香る硫黄臭からもわかるように、豊かな効能は折り紙付き。館内には硫黄の香りが充満し、硫黄泉好きには特に好評だ。
ただし、高い酸性度により顔を洗うと目に染みる他、長時間の入浴は肌に負担がかかるので要注意を。また、貴金属はお湯に浸けると一瞬で黒く変色するので、アクセサリー等は必ず外してから入浴しよう。
館内はゆったりくつろげるよう、全面カーペット敷き。広い休憩ロビーもある。

また、併設のカフェレストラン「プリマベーラ」では、ピザやパスタ、カレーや丼などの食事メニューの他、ソフトクリームやケーキなどの軽食を提供。長野県産のカラマツを使った高い吹き抜けの開放的なホールでゆっくりと味わいたい。

この「乗鞍高原 湯けむり館」から徒歩2分ほどの場所にある「せせらぎの湯」は、知る人ぞ知る無料で無人の小さな半露天風呂。木立の中に木造の浴舎がポツンと佇む素朴な温泉だ。
驚くのは、その成分。総硫黄が37㎎で、硫黄の濃度は草津温泉の倍以上と、県内屈指の “濃さ”だとか。開設期間は4月末の連休から11月の半ばごろまで。初雪が降ると閉鎖となる期間限定の営業だ。

乗鞍高原温泉の起源の詳細はわかっていないが、湯川源泉では以前から自噴した温泉が渓谷に流れ出ていたそう。
1934年頃から春夏の年2回、硫黄分が空気に触れて白く固形化した「湯の花」採りが行われ、地域の収益となっていたとされる。

引湯の話は1945年頃からあったものの、7km以上の距離があり、高低差550m弱という急峻な斜面と豪雪の問題のほか、特酸性硫化水素泉という特殊な泉質による技術的課題もあったことから、長く実現はしなかった。
30年後の1976年、2年がかりの難工事でようやく完成したのだ。

源泉までは一般登山道もないうえ、硫化水素ガスの発生のため、現在、入域・入浴もできない。山の恵みそのものを麓の施設で存分に堪能したい。
なお、「せせらぎの湯」にはトイレがないため、観光センター駐車場の公衆トイレの利用を。
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