風情ある渋温泉の温泉街で本格的なフランスの家庭料理が味わえると評判の「渋温泉食堂gonki(ゴンキ)」。フランス北東部のアルザス地方で郷土料理を学び、三ツ星レストランのシェフのもとで腕を磨くなど、国内外で修業を重ねた岸田陽一シェフと、接客やパン作りを担当する里佳子さん夫妻が2020年1月にオープンした。
特徴は、岸田シェフが5年ほど過ごしたフランスで親しまれている郷土料理をベースに、旬の地元素材をふんだんに使った、素朴で温かい料理が楽しめること。決まったメニューはなく、仕入れの状況に応じて昼夜ともにコース料理(6,600円)で提供する。
食材は季節の野菜や果物はもちろん、シェフ自ら山に入って収穫した山菜や根曲がり竹、きのこ、川魚やジビエなども。「この地域は全国的に見ても多彩な食材が豊富に揃う宝庫だと、今までの経験からも感じます」と岸田シェフは話す。
店内は温かく落ちついた雰囲気で、カウンター席はなく、テーブル席のみ。卓上で大皿料理を皆で取り分ける食事スタイルだ。これはシェフが大阪で修業をした店の影響だそうで、「料理をシェアすることが食事の会話のきっかけになれば」との思いが込められている。まさに「渋温泉食堂」の名の通り、フランスの大衆食堂であるビストロのように肩肘張らずに楽しめる店だ。
写真は、コース料理のメインの一例で、アルザスを代表する伝統料理「シュークルート ガルニ」。シェフのこだわりが詰まった一品だ。「シュークルート」とは塩漬けして乳酸発酵させた千切りキャベツで、その「シュークルート」をメインに、ソーセージや豚肉、ジャガイモなどの「ガルニ(付け合わせ)」を加えて深みのある味わいに仕上げている。こんなにたっぷりのキャベツを一度に味わえる料理は本場ならでは。大満足すること間違いなしだ。
マスタードが添えられているのは、県産の熊肉。じっくりと煮込まれ、臭みはないのに存在感と旨みが感じられる。信州とアルザスの食文化が一皿の上で融合しているのも興味深い。
ちなみに、肉の下に敷かれた「シュークルート」のキャベツは里佳子さんの父が地元の佐久市で自家栽培しているもの。料理全体のボリュームは多いものの、肉類が多いヘビーなアルザス料理を日本人にも馴染む味わいに仕立てているのがgonki流だ。
アルコールは、フランス産ワインはもちろん、地元産の「志賀高原ビール」や日本酒も用意。「シュークルート ガルニ」はアルザスの辛口白ワインとともに楽しみたい。
なお、岸田シェフ自身は岡山県出身。調理師専門学校卒業後、大阪、フランスを経て、2013年に里佳子さんの実家がある長野県に移住し、軽井沢のホテルで働いた。
そして、自分たちの店を開業するに当たり、大阪や広島など他県も検討したものの、これまでの生産者との縁もあって、豊かな自然がアルザスに似ていると感じた渋温泉にたどり着いたという。
温泉街の9つある外湯の3番湯「綿の湯」の目の前にある元スナックだった空き店舗を改装し、オープンに至った。
「渋温泉という場所が日本らしくて素敵ですし、食材も素晴らしい。フランスにいた頃、アルザスの人たちは自分たちの地域を誇らしげに語っていましたが、この場所なら私も胸を張ってフランス時代の友人たちを招くことができます」と岸田シェフ。
気になる店名「gonki」は、シェフの父の実家である秋田県の家の屋号だそうだ。使っている和食器も実家の蔵から見つけてきたもので、里佳子さんが接客時に着ている割烹着と相まって、昔ながらの懐かしい雰囲気も感じられる。
ときには厨房にふたりの子どもたちの姿が見られることも。子育てをしながら伸び伸びと料理を提供するおおらかさも、作り出す味わいに反映されているようだ。温泉とともに、本場の雰囲気たっぷりの食事を心ゆくまで楽しんでほしい。
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